木工を仕事にするということ
以前のサイトに木工について書いた記事があったので、そのまま以下に転載します。(2009年記。)
木工を始めたいきさつ
子供の頃、夏休みなど絵の宿題がある時は神社の本殿や寺の鐘撞き堂などを好んで描いていました。
複雑な木組みが面白く、描き応えがありました。
通っていた小学校は古い木造の校舎で戸などの建具も全て木で、ベニヤなどは無く全て無垢材でした。
子供心に木の良さがなんとなくわかっていたように思います。
「職業=サラリーマンOR公務員」という考え方オンリーの環境で育ち
高校のころギター製作の学校のパンフレットを取り寄せた時、周囲はそういう道にすすむのは大反対で、
その当時は木工などを職業にするという考えは持てずにいました。
その後就職、転職し、転勤となり、転勤先の職場の近くに木工が学べる学校の存在を見つけました。
それを見つけてからはその学校の存在が気になり、ついには入学することを決断します。
こんなに面白い学校があっていいのか?と思ってしまうくらいです。
できれば高校生くらいの年代から学びたかったものです。
人生面白いものでどこでどう道が変わるのかわかりません。
ところどころで決断が必要な分岐点がやってきますがとにかく自分の気持ちには逆らわないようにしていれば後悔はしないものです。
かなり遠回りになりましたが
木工をほそぼそとやっていくことになりました。
木工家の適性?
木工家の適性についての記述がいろいろなサイトにあります。
どういう作品を作るのか、どういう働き方をするのかでその適性は変わってくるとは思います。
木工家といっても創作家具なのか、普通の普段使いの家具なのか
大工的家具なのかといった作りの違いによって適性も変わるでしょう。
また、いくらくらいその木工で収入を得たいのかでも変わってくるでしょう。
あるサイトでは貧乏に強いことが条件に挙げてありましたが(私の場合は)それは間違いないようです。
今は量販店などで合板などを使用した激安の家具が販売されています。
大多数の方がそれを購入されている昨今、値段の張る無垢の家具はそんなに売れるものではありません。
よほど顔の広い人や営業の達人でないとなかなか注文に結びつけることは難しいのではないでしょうか。
あるサイトの記述では大多数の木工家は年収200万そこそこで生活しているとのこと。
しかし私にとっては年収200万というのはすごい金持ちだと思ってしまいます。
そもそも屋久島で勤め人として働いた場合、男性でも月収は10万円台が多いようで
年収200万にもならない人もいるのではないでしょうか。
好きな木工をして200万も稼げるのならそれはそれで素晴らしいことだと思います。
少し食料を自給していれば何とか生きていけるし
無駄なものを買わず
住宅ローンも無ければ月10万もあればお釣りがきます。
(お子さんがいらっしゃるご家庭ではそうはいかないのかもしれませんが、、、。)
お金が無いのを貧乏だと思わず、隣の裕福な人と比較せず、
飢えることなく生きていければそれでよしと思うことができれば
OKです。
あとはある程度の才能は必要でしょう。
しっかりとした工作技術。
工夫する能力。
顧客対応力。
顧客ニーズをつかむ能力。
営業力。
などでしょうか。
まあ、売れるいい作品が作れて、すごい営業力があれば貧乏することは無いのでしょうが、、、。
木工で食べていけるか
木工で生活ができるかどうか、、、
現状なかなか厳しいものです。。。
とにかく自分にあったスタイルの木工をやり続けるしかないのでしょう。
世の中、木工が生業の人はたくさんいらっしゃると思います。
屋久島においては屋久杉工芸が生業の人はたくさんいらっしゃいます。
お土産に特化した工房です。
観光が基幹産業である屋久島にとってはそういう木工家のあり方がやはり多くなるのでしょう。
屋久島における木工
屋久島は木とは切っても切れない縁があります。
屋久島には縄文杉をはじめとする屋久杉があり、
観光でこられる人の大多数の人が森に入ります。
屋久島の大部分は森で平地が少ないため農地も狭く、昔は山の中にまでカライモ畑を作っていたようです。
江戸時代の年貢は米の代わりに屋久杉の板だったようです。
斧で屋久杉を切り倒し、のこぎりで板にしていきました。
(屋久杉自然館で詳しく学べます。)
また、島のため船は必需品で腕の立つ船大工もいたようです。
私の思う屋久島のあり方は
自然との調和、共存です。
建物もコンクリートや新建材などを使わず地杉を使います。
外壁も杉で建てられた家は屋久島の風景になじんでいます。
風情があります。
山には数十年前に植林された杉が所狭しと並んでいます。
建築材に困ることは当分無いでしょう。
最近ちらほらと杉の家を見かけます。もっと木の建築物が増えることを期待します。
工芸の方はご存知のように屋久杉工芸がみやげ物として作られています。
しかし屋久杉という大変高価な材ゆえにどうしても高額な物になってしまいます。
ちょっとしたアクセサリーや小物などは雑木などで可能ですので材料入手は比較的容易でしょう。
流木などもいいかも知れません。買えば大変高価な大きな台湾檜が流れてくることもありますので面白いです。
それでは家具の方はどうでしょうか。
屋久島産材はきっちり乾燥した材が入手できず
商品にするにはなかなか厳しいものがあります。
キャビネットなどはやはりタモやナラといった材を使いたいのですが屋久島にはなく
どうしても島外産材になってしまいます。
傷がつきやすいのですが杉の厚めの材を使い、
簡単な作りのテーブルや椅子も材料費も安く、節もありますが面白い作品になるでしょう。
弊工房としては
いろんな材で作っていきたいと思います。
家具に向くタモ、ナラはもちろんクルミやカエデ、メイプル(シロップの木)、
屋久杉、地杉、島内産材広葉樹も入手できれば適材適所で使います。
2009年記。