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カンナの話


カンナがなくても木の家具は作れます。
しかし、カンナには木工の醍醐味が凝縮されています。
たかがカンナ、されどカンナ。
以前のサイトにカンナについて書いた記事があったので、そのまま以下に転載します。(2009年記。)


素晴らしい発明品

木工手工具のなかでカンナほど奥深く面白い道具はありません。
誰が考えたのか、こんなすばらしい道具をよく思いついたものです。

面白いもので
西洋のカンナは押して削り、
日本は引いて削る。

西洋のカンナの台は金属、
日本は木。
なぜ押し引きの違いがあるのかは分かりませんが
やはり日本は木の文化であることを再認識します。

カンナは買ってきたらすぐに使える道具ではなく
それなりに調整が必要です。
西洋カンナは台が金属製なので
それに比べれば木でできた日本のカンナの台の調整は比較的容易かも知れません。


私自身カンナを使い出してからはサンドペーパーのみの仕上げはしていません。
ペーパーよりカンナの方が明らかに早くきれいに仕上がります。
しかし精度の高い大型サンダー機があればその機械によるサンドペーパー仕上げでも良いのかもしれません。

カンナで木を削るとその削った表面は鏡のようになります。
周りの景色が写りこみます。
その景色を見るたびにカンナの素晴らしさを再認識します。


どんな家具を作るかにもよりますが
かんな削りが出来ないからといって家具が作れないというものではなく
それぞれの個性で家具を作ればよいだけのことです。

サンドペーパーのみの仕上げでも
味のある素晴らしい家具を作る方もいらっしゃいます。

それぞれの個性、持ち味で自分自身が満足が出来る家具、
消費者のニーズにあった家具を作ればよいと思います。



カンナを扱う能力

カンナを一人前に扱うことができる人は多分どんな家具でもそつなく作れるように思います。
木工に必要な技量が試される道具なのかもしれません。

木工初心者の方の中にはなかなかカンナが扱えず困っている人もいらっしゃると思います。
実際、木工の学校でも大勢の人がカンナには苦労していたようです。
実用の範囲の使用においては本当はそんなに難しい道具ではないのですが
なかなかのようです。


数ミクロンほどの薄い削りくずを出すような削りを求めず
実用的な範囲内での削りであれば
いくつかのポイントさえ抑えておけば誰でも簡単に調整でき
きれいに削ることができます。



砥ぎ

私は専ら人工砥石を使用します。
高価な天然砥石は高嶺の花です。
実用的な削りなら中砥1000番と仕上げ6000番で十分です。

砥ぎもある程度慣れないと上手く砥げません。
初めて砥いで、すぐに上手くは削れないと思います。

特に刃先のラインはやはりある程度熟練しないと上手くいかないでしょう。
砥いでは削り、砥いでは削りを繰り返すうちに
どうすれば良いかおのずと分かるようになります。
(詳しい砥ぎの方法は他の木工サイトでたくさん紹介されていますので割愛します。)



台直し

カンナの台は木でできています。
木は空気中の湿気により伸縮します。
よってカンナの台も当然伸縮します。

「カンナは台で削れ」といわれるくらい台は重要です。
刃を完璧に砥いだとしても台が狂っていると全く削ることができません。
素人の頃はそんなことは知る由も無く
ホームセンターで買ってくればすぐ使える物と思っていました。
まさかこんな奥が深い道具とは思ってもみませんでした。
「いかに薄く削るか」を競い合う気持ちも分からないでもありません。

台は台直しカンナという刃が立ったカンナで直します。
詳しい方法は他の木工サイトで詳しく紹介されていますので割愛しますが
刃の砥ぎと同様に削りの合間に台を直すことで気分転換がはかれます。

台直しもカンナの基本、原理を考えながら直しては削り、直しては削りを繰り返すことで
どこをどうすればよいかはすぐに分かるようになります。


台直し道具
台直し道具。立カンナとストレートエッジ。


台直し
台直しをしています。


裏金を攻める

カンナの刃の出し方もある程度センスが必要です。
せっかく台直し、刃砥ぎをしても刃の出し方ひとつでで削りの質もガラリと変わります
特に裏金の入れ方は重要です。

逆目削りや逆目がでやすい条件での削りでは裏金を刃先ぎりぎりまで入れます。
これは視力がものをいいます。
カンナの刃先のラインと裏金のラインの隙間の具合を見て判断するので
視力がいいと一発で決まるのですが
視力が悪いとカンに頼らざるを得なく
時間的にロスがでたり、誤ってカンナ刃よりも裏金を出しすぎてしまいます。



削り

上手く刃が砥げ、台が直せ、刃の出し方も決まれば
もう無条件にカンナは削れます。
カンナ削り 木工の全てはカンナに凝縮しているといっても過言ではないでしょう。




ヒノキのカンナ削り
ヒノキ材を削る。


2009年記

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